すべてが思い出になる前に




放課後、下駄箱で靴を履き替えながら友理奈は茜に言った。



「ちょっと明学前を通って帰ってもいい?」


「うん、いいけど」



高校生になりお隣の学校にも関わらず、明学付近を一度も出歩いたことがなかった。


徒歩で明学へ向かい、正門からは男子高校生がゾロゾロと学園都市駅へ向かっている。人の波に逆らい、校舎の裏側にあるテニスコートへ向かった。


高い位置にテニスコートがあり、少し背伸びをして網フェンスから覗いた。


そこにはテニスボールを地面に2、3度バウンドさせ高くボールを上げてサーブを打つ手足の長い男子生徒。


黄色のシャツに黒のハーフパンツを履いた涼太の姿があった。





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