すべてが思い出になる前に
「大丈夫だ、俺がお前の傍にいるから」
どんなことがあっても、この腕があるから大丈夫。この人の傍にいれば何も心配することは無い。
彼に抱きしめられた時、友理奈は自分の人生の全てを彼に預けたような気さえした。
時計はAM5:15
朝の出勤が早い友理奈は、ベッドから起き上がり身支度を始めた。
涼太も少し遅れてリビングへやって来ては、ケトルでお湯を沸かし始めた。
「コーヒー飲んでいく?」
「いいの?ありがとう」
マグカップにお湯を注ぎ、身支度を済ませた友理奈はマグカップを手に取り、両手を添えて飲む。
「まだ朝早いから寝てていいのに」
「俺も早めに行って研究の準備をしないといけないから」
そっかと返事をした友理奈は、マグカップをテーブルに置き、バタバタと洗面所で歯磨きをして荷物を持って玄関へ向かった。
「じゃあね、また連絡する」
「おぉ、頑張れよ」
涼太は笑顔で手を振って友理奈を見送った。