すべてが思い出になる前に





ある日、涼太は鴨川と大量の資料を台車に乗せて運び、研究室へ戻る途中にガラス張りの渡り廊下を通りかかった時だった。


向かい側から富永が2人を見つけて走って来た。



「何度もPHSにかけたけど、出なくて…」



涼太は左胸ポケットに入れていたPHSを右手で取り、同じ着信が何件か来ていた事にようやく気付いた。



「ごめん、気付かなかった。何かあった?」


「教授が宮﨑くん呼んでる」


「またかよ、しょっちゅう呼ばれるな‼︎そんなに研究進んでないのか?」


「そんな事ないけど…とりあえず行って来る」



涼太は走って教授室へ向かい、部屋の前で一度深呼吸をしてドアをノックした。



「失礼します」



ガチャっとドアノブを開けて中へ入って行った。









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