すべてが思い出になる前に
---2ヶ月後
空港内の屋上で両手で柵を掴み、滑走路を走る飛行機が次々と離陸して行くのを眺めていた。
「彼氏さんはいつ日本に帰国するんですか?」
ベンチに座っていた元倉が友理奈に声をかけた。
「あっ…」
「もしや、知らないんですか?」
「うん。詳しい日時までは聞いてなかった。本人も知らなそうだったし。…でも2ヶ月間だからもうそろそろじゃないのかな?」
笑って誤魔化す友理奈は、腕時計を見て「もう休み時間終わるよ」と元倉に声をかけ、自分の担当である搭乗口付近へと向かった。
元倉と仕事の話をしながらロビーを歩いていると、背後から声をかけられた。
「あの…すみません」
友理奈の背後から声をかけた男性客は、反応を伺い白い歯をニッと見せて笑った。
「はい‼︎」
声をかけられた友理奈は、聞き覚えのあるその声の主に気付き振り向いた。