すべてが思い出になる前に
涼太が立ち去り、身体を起こした友理奈に元倉が話しかけた。
「もしかして彼氏さんですか?」
「そう」
「なんとまぁ…」
元倉は実際に涼太を初めて目の当たりにした。
友理奈から彼氏事情を聞いてはいたが、想像以上に爽やかで長身、それにラフな感じでスーツを着こなしていた。
涼太の雰囲気が素敵に見えたのか、元倉は無意識に両手を重ねていた。
「今さっきのシーンなら、抱きついたりするところじゃ…」
「どうしたの?早く行くよ!」
「あっハイ!」
元倉は後ろを振り向き、涼太の後ろ姿を見て首を傾げた。
「どこかで見覚えあるような…」
と1人つぶやきながら、スタスタと歩いて行く友理奈を追いかける元倉だった。