すべてが思い出になる前に
数日後
肌寒くなり、コートを着込み始めた頃だった。
とある居酒屋から笑い声が響き、店も活気に満ち溢れていた。
照史が乾杯の音頭を取り始め、翼と茜、涼太と友理奈、いつものメンバーがテーブルを囲んだ。
「それじゃあ、今日は金曜という事でお仕事お疲れ様。そして涼太も留学から帰って来て、全員揃ったという事で乾杯‼︎」
ビールのジョッキを傾け、グビグビと飲み干す。
「仕事終わりの一杯は最高だな」
「なぁ、忘年会にしては早すぎないか?」
「仕方ないだろ⁉︎年内で皆んなが集まれる日が、今日しかなかったんだよ」
照史が今日の忘年会の幹事だったのだが、シーズン的に店探しとスケジュール調整に相当苦労した様だ。