すべてが思い出になる前に
持参のエプロンを身に付けていた友理奈は、帰宅した涼太の様子を心配そうに伺った。
「もしかして…晩御飯食べて来た?」
「いいや、まだ食べてないよ」
普段なら家に帰っても真っ暗な冷たい部屋が待っているだけのはずが、自分のことを心配して待ってくれている人がいる暖かさに、ちょっと泣けてしまった。
リビングのテーブルには、用意されたご飯が綺麗に並んでいた。
「仕事帰りで疲れてるのに用意してくれてありがとう」
涼太は椅子に座り「いただきます」と手を合わせてご飯を食べ始めた。
「あっそうだ友理奈、今度休みが合えばどこかに出掛けない?」
「うん、いいよ」
友理奈は笑顔で返事をしながら、キッチンで洗い物を始めた。