すべてが思い出になる前に





涼太は床に置いていたリュックのチャックを開けて、手の平サイズの四角の紺色のケースを手に取った。


パカっと開けると、中には婚約指輪がキラリと輝いていた。


そしてキッチンにいる友理奈をチラッと見て、そのケースはすぐにリュックに閉まった。



何故涼太が婚約指輪を持っているのか⁉︎


それは数ヶ月前に遡る。



* * *



久々に実家に戻った時、両親に友理奈と付き合っている事を報告すると、父親が説教じみた話を始めた。



「お前はもう27歳だぞ、本気で結婚を考えているのか?男はこの人だと思ったら覚悟を決めろ‼︎」


「そうよ〜あんなにいい子を逃したら、涼太は一生結婚できないわよ!」



そんな父の話を隣で聞いていた母親は、和かに話しに加わる。









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