すべてが思い出になる前に
一緒にその場に居合わせた同期が、小声で涼太に話しかける。
「宮﨑、お前なんかやらかした?」
「いや、全く心当たりがない」
「例えば実験用の道具を壊したとか、研究データを紛失したとか」
「いや、それもないんだよな〜」
大学院時代にも教授からの呼び出しが多々あった事もあり、慣れてはいるのだが
やはり社会人になって自分だけ名指しで呼ばれるという事は、何か重要な事なんじゃないかと予想は付いていた。
15:00少し前に会議室前で待機していると、部屋のドアがバッと開き、涼太を食堂まで呼びに来た男性が中から出て来た。
「中へどうぞ」
男性が会議室の扉を開け、涼太は後に続いて会議室へ入って行った。