すべてが思い出になる前に



* * *



「失礼いたしました」



15分後に会議室から1人で出て来た涼太は、深い溜息を一度ついた。


そしてその足で研究室へ戻る際、渡り廊下で一度足を止めてポケットから携帯を取り出した。


電話の相手は友理奈だったが、何度かけても応答がなかったので、メールを送った。



帰宅後の21:30頃、ソファに腰掛けてメールのやり取りをした。



「今度会った時に大事な話があるんだ」


「それっていい話?悪い話?」



友理奈の質問に言葉を見失った涼太は、少し考えて返事をした。



「どっちも…かな」


「そっか…分かった。じゃあ今度会った時に話聞くね」


「おぅ」



メールを送り終えた涼太は携帯をテーブルに置き、顔を上げた時に、ふと棚の上に置いていた婚約指輪のケースに視線が止まりじっと見つめた。






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