すべてが思い出になる前に
涼太は両手に持っていたナイフとフォークを、そっと白い皿の上に置いた。
「あのさ、大事な話があるんだけど」
「うん、どうしたの?」
涼太はいつになく低いトーンで、真剣な眼差しを友理奈に向けた。
「アメリカのサンディエゴ支所に転勤になったんだ」
「えっ…いつから⁉︎」
「10月から」
涼太はリュックから一枚の紙を取り出して、友理奈に手渡した。
友理奈は一枚の紙を見て言葉を失った。
そう、あの日涼太は直々に社長から一枚のプリントを手渡された。
涼太は受け取ったプリントを見て目を疑った。
『辞令書 宮﨑涼太殿
平成2▲年10月1日付をもって
研究センター勤務を解き、
アメリカ サンディエゴ支部勤務を命じます』
研究がこれからだという時に、海外営業部に異動になった。