すべてが思い出になる前に





緊張した面持ちでマイクの前に立ち、新郎新婦の方に体を向け、ジャケットの中に手を入れて原稿を取り出し読み上げる。



「えぇ、ただいまご紹介いただきました楠田と申します。この度は涼太・友理奈、ご結婚おめでとう。私は新郎新婦共に小学校からなので、かれこれ18.19年ぐらいの付き合いになります。


涼太は中学高校共にテニス部で、主将・キャプテンを務めるなど、実力さながら部員みんなの絶大な信頼を集めていました。


残念ながら怪我でプロの道を断念する事になりましたが、人の為に尽力を尽くす研究職で日々頑張っています。


爽やかでクールな人間かと思いきや、案外負けず嫌いというか、最後まで目標を持って何事にも成し遂げる、そんな強い気持ちを持った私の数少ない親友です」






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