すべてが思い出になる前に
1人の部員が翼に羨ましそうに言った。
「いいよな、翼は学年1位で成績良いから行きたい大学選び放題じゃん‼︎」
「俺はテニスで推薦は取れないけど、一般かセンター利用でW大学に必ず行きたいと思ってる」
数人の部員から「おぉ‼︎」と歓声が上がった。
「取り敢えず、勉強も頑張らないとな」
頷いて聞いていた涼太の両肩をポンと叩かれ、振り向くと顧問の先生が立っていた。
「もう下校時間過ぎてるぞ、早く帰れ!ここで溜まるな‼︎」
顧問から注意され元気よく「はい」とだけ返事をして、逃げるように学校を後にした。
顧問は逃げるように立ち去る生徒達を見届けながら「気を付けて帰れよ!」と一言だけ伝えて、校舎へ戻って行った。