すべてが思い出になる前に




大きな大会を目前とした5月。


いつもより早く家を出た涼太は歩いて駅に向かっていると、前方には照史の後ろ姿が見えた。



「おい、照史‼︎」



名前を呼ばれた照史は振り返り涼太に気付くと、右手を高く上げた。



照史は走って来る涼太の右手にはテニスバッグが握られているのを見て、思わず声をかけた。



「よかったな、復帰出来て」


「また怪我したら終わりかもな」


「俺も怪我だけは気をつけよー」



軽い感じの会話が続いていたが、涼太が関東大会の話を持ち出した。



「近々大会があるんだけどさ」


「いつ?」


「日にちは6月5.6.7.8日の4日間」



手帳を開き始めた照史の顔は浮かない感じだった。






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