すべてが思い出になる前に
テニスの試合が行われている同じ時間帯、南女ではマーク模試が行われていた。
回答用紙の四択の1つに鉛筆で黒く塗りつぶしていた手元が止まった友理奈は、腕時計を見て涼太と翼の試合経過が気になってしょうがなかった。
茜も必死に解いているものの、いつもより集中力が欠けていた。
チャイムが鳴り、回答用紙を集め出した途端に友理奈は教室を飛び出して行き、茜も気付き急いで友理奈を追いかけた。
「友理奈、どこに行くの?」
「行くところなんて、決まってるでしょ⁈」
2人が向かった先は関東大会の会場。
会場に着き、階段を駆け上り、目の前に広がる光景は試合真っ最中の涼太と翼の背中だった。