すべてが思い出になる前に
「そこの卒業証書授与式の隣に立て、写真撮るから」
「え〜」
「早くしろ‼︎」
父親から言われ、渋々隣に立つ涼太は数枚写真を撮られた。
卒業式の様子を伺いに来た涼太の兄は、校舎の方へ顔を上げた。
「懐かしいな〜」
涼太の兄は同じ学校出身だった事もあり、久々に来た明学に懐かしさを覚えていた。
隣の南女も卒業式だったのか、女子生徒が明学前を通り過ぎて行くのを見かけた。
1人の女性が涼太の兄だと気付き、恐る恐る声をかけた。
「もしかして、裕典(ゆうすけ)?あっやっぱりそうだ!」