すべてが思い出になる前に
「あっそう言えば、友理奈は秋以降にカナダへ留学なんだって!」
「そうなのか?スゲーな‼︎俺も早くアメリカでテニス漬けの日々を送りてーな‼︎」
翼は呑気なことを言っている隣で、涼太はえっ?と言葉に出した。
「ずっと前から考えてたみたいよ、モデルを続けるか、自分の夢を叶えるか」
いつも自分の夢ばかり語っていた涼太だったが、友理奈の夢を一度も聞いたことがなかった。
「友理奈の夢って何?」
「うそ、涼太知らないの?私が涼太に聞こうとしてたのに。そっか、みんな知らないのね…」
誰もが友理奈がカナダに留学する意味を知らなかった。
後日、友理奈と連絡を取ったが返事が無く、これを皮切りに一切連絡が取れない状況になった。
留学の件と、連絡が取れなくなった空白の日々が明らかになるのが、数年先になるとは…