オオカミくんと透明少女
オオカミくんとの出会い
【透明というのは嫌なものだ。】

その夜は満月だった。

私とあいつが出会った日。


人間誰にだって秘密がある。
人間だけじゃないなんでも秘密ぐらいある。
その秘密には大きさがある。
小さい、実はマザコンとか。
いやそれもしっかりとした秘密だ。
だがしかし、本当に大きな秘密もあるのだ。
実はド変態?浮気してる?
そんなん大したことではない。
だって高校一年生の私、槙合紅流那は、

半、透明人間なんだから。

半というのも理由がある。
私の祖父は透明人間だった。
祖父と祖母が結婚し、私の母が生まれた。
まぁその子供だから本当は
私は半、半透明人間です。
透明人間と人間が結婚できるのかって?
そんなん知るもんか。
自分はどんなことができるかって?
それは…いちよう知っている。
まぁひとつしかないがな。
それは…

「あれ〜?るなーまた逃げたなー」
分かってるくせに廊下で大声で言うな。
にしてもこの事をこんなとこで考えた私もバカだ。反省はしとこう。
私はさっきから隣にいる、私の親友美里の袖を引っ張る。
整った髪を揺らしてこっちを向いた美里は皆にばれないようにニターッと笑った。
そのままで廊下の端まで行く。
全く透明というのは嫌なものだ。
端まで行くと美里は「いいよ」と笑った。
そこで誰もわからないと思うが目を瞑る。
透明…透明…透明…
パッと目を開くと自分にとっては分からないが美里は「おー!」と手を叩いていた。
美里の目には私の顔がうつっていた。
「全く、廊下で叫ばないでよ。変だよー」
美里は頭に手を当て、てへっとしたを出した。
女子の私でもちょっとキュンッとしてしまう。
あらためて言うとこの子、矢野町美里は皆に人気のアイドル的存在のとっても可愛い女の子なのである。
廊下に戻ると、一斉に注目が集まる。
主に男子なのは気にしないでおこう。

「うおお、槙合と矢野町だ。かわええ〜」
うるさいな、静かにしてくれ。
「お前どっちタイプ?俺は矢野町だなー元気で可愛いし。」
あーよかった。君に好かれても困るよ。
「えー俺は断然槙合だなー静かだけど笑うとギャップ的なのがいいなー」
おい聞こえてるぞ。言葉を慎め。
と、いうこともできずそこら変にふたりで笑っていた。
おい、男子ら顔赤くするなよ。モテないぞ。
あぁ、ほっんと男子なんてしょうもない。
運命の相手なんて出てくるんだろうか。

そう思っていた。昼までは。

夜。満月が丁度いいところに上がっている。
外、出よっと。
ベランダに出ると周りの声が聞こえてきた。
まだ9時だからそこそこ街中のここにはまだ人がいた。
もう冬かぁ。そろそろクリスマスということもありイルミネーションの光がいい雰囲気を出していた。
その時だ。
目の前に影が過ぎった。
「うおっ」
つい、女子らしからぬ声を出してしまう。
「カラスか?」
いや、それにしてはでかい影だ。
ベランダの柵に座っていた。それはどう見ても人だ。日本人だといいが。非常識すぎて怖い。

「槙合紅流那!」

おう、日本人かよかったよ。
…って私何言ってんだよ。こんな時冷静になって意味はあるのだろうか。

「誰?」

逆光で顔が見えない。声的に男だろう。多分。

「梶原沙玖斗です!」

いや何してんだよってコトだよ。

「あのっ」

そう言って柵を飛び降りる。
柵の高さは2メートルくらいなのになんなく降りてきた。目の前に立った男を見て、はっきり言っていろんな感情が混ざっていた。
だってその男には、

耳が頭に生えてたから。

叫びたくなった。
だけどその衝動はすぐに消えた。
なんとなくこんな奴がいてもおかしくないと思えるからだ。
透明人間がいて、耳が生えてる人がいても特におかしいとは思えないからだ。
そいつはそう、世の中で言う美形だ。
茶髪の髪はサラサラで触りたくなるくらいだ。
でも背は私より少し低くてちょっと可愛いとも思ってしまう。

まぁそれぐらいで私は別に何とも思わない。
いや、思わなかった。
次の言葉を言われるまでは。

「俺と付き合って!」

「ハァ?!」

夜の空はわずかに街の光が灯っていた。

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