リナリア
「えっ…この学校にプロ…?」
「プロカメラマンってことは、知春くんの撮影も?」
「うん。してくれたことある。名桜は仕事仲間だよ。ね?」
「…仲間、と呼べるほどかはちょっとわかりませんが、お仕事を何度も一緒にやらせていただいています。ありがたいです。」
「じゃあ、知春くんがどんな風に仕事してるのかとか知ってるんだ!」
「え、知りたい!」
「えっ…!?」

 女子のパワーは強い。確かに、有名芸能人の撮影風景について知りたい気持ちがあることは仕方のないことかもしれないが、今ここにいるのは普通の高校生の知春だ。それに守秘義務だってある。

「えっとあの…お仕事のことについては、公にというか出版されたり、公開されてからしかお伝えすることができなくて…そして私もいくつかお仕事はさせていただいているのですが、自分の仕事が一体いつ世に出回っているのかまでは把握しておらず…。知春さんのことについてもお伝え出来ないんです。すみません。」
「そういうこと。あんまり色々話しちゃだめってことになってるので、その辺り、名桜にもあんまり聞かないでくれると助かります。」

 知春が小さく頭を下げる。それを見て名桜も合わせて頭を下げた。

「ごめんね、困らせちゃって!」
「いつでも遊びに来てね。」
「遊びにじゃなくない?写真部の撮影でしょ?プロに撮ってもらえることなんてなかなかないし、結構得じゃない?」
「あ、ありがとうございます。」

 何とかうまくかわせたようだ。

「名桜、今度の仕事のことでちょっと確認したいことがあるから来てくれる?みんな、ちょっと抜けるね。後で戻ってきます。」
「はーい!行ってらっしゃい。」

 今度の知春との仕事の予定は聞いていない。名桜は首を傾げつつも知春の後についていった。
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