リナリア
着いたのは屋上へ向かう階段だった。
「…あの、知春さん。」
「ん?」
「屋上は鍵がかかってて入れませんよ。」
「鍵ならここにある。」
得意気な表情を浮かべた知春の右手には鍵があった。
「…とってきたんですか?怒られますよ。」
「今度屋上での撮影があるので、雰囲気掴みと練習したいことがあるので貸してくださいって言ったら貸してくれた。」
「…知春さんに甘すぎませんか、先生たち。」
「役得役得。それに、先生たちに言ったことは嘘じゃないよ。屋上のシーンがあったんだ。」
「ということは、知春さんは私に仕事の話があったわけではなくて、練習がしたいということ…ですね?」
「あたり!」
ガチャリと音がして、ギィと鈍い音の先に光が差し込む。昼間とはうって変わって涼しくなった風が髪を揺らす。
「わー俺、屋上って生まれて初めて来た!名桜は?」
「写真の撮影で何度か来てますね。」
「そうなんだ。へぇーこんなに見えるもんなんだね。」
「屋上と知春さんっていうのもなかなか新鮮でいいですね。シャッター切ってもいいですか?」
「俺にも撮らせてくれるならいいよ。」
「…最近、カメラはブームですか?」
「下手だけど、切り取りたい一瞬が前よりも増えたから。」
夕暮れのオレンジが、知春の頬を染める。その横顔が綺麗で、名桜はシャッターを切っていた。
「魔法使いはさ、シンデレラに魔法をかけてあげて背中を押すなんて、すごくいい人だよね。」
「…突然何を言いだすかと思えば…。まぁ、そうですね。特にシンデレラからの見返りはないですし。」
「魔法使いは、自分で可愛くしたシンデレラを見て、一目惚れとかしなかったのかな?」
「…思考が随分恋愛的ですね。」
「ずーっと考えてるからね、最近。」
ふっと落ちた小さな笑み。少し疲れているようにも見える。
「…あの、知春さん。」
「ん?」
「屋上は鍵がかかってて入れませんよ。」
「鍵ならここにある。」
得意気な表情を浮かべた知春の右手には鍵があった。
「…とってきたんですか?怒られますよ。」
「今度屋上での撮影があるので、雰囲気掴みと練習したいことがあるので貸してくださいって言ったら貸してくれた。」
「…知春さんに甘すぎませんか、先生たち。」
「役得役得。それに、先生たちに言ったことは嘘じゃないよ。屋上のシーンがあったんだ。」
「ということは、知春さんは私に仕事の話があったわけではなくて、練習がしたいということ…ですね?」
「あたり!」
ガチャリと音がして、ギィと鈍い音の先に光が差し込む。昼間とはうって変わって涼しくなった風が髪を揺らす。
「わー俺、屋上って生まれて初めて来た!名桜は?」
「写真の撮影で何度か来てますね。」
「そうなんだ。へぇーこんなに見えるもんなんだね。」
「屋上と知春さんっていうのもなかなか新鮮でいいですね。シャッター切ってもいいですか?」
「俺にも撮らせてくれるならいいよ。」
「…最近、カメラはブームですか?」
「下手だけど、切り取りたい一瞬が前よりも増えたから。」
夕暮れのオレンジが、知春の頬を染める。その横顔が綺麗で、名桜はシャッターを切っていた。
「魔法使いはさ、シンデレラに魔法をかけてあげて背中を押すなんて、すごくいい人だよね。」
「…突然何を言いだすかと思えば…。まぁ、そうですね。特にシンデレラからの見返りはないですし。」
「魔法使いは、自分で可愛くしたシンデレラを見て、一目惚れとかしなかったのかな?」
「…思考が随分恋愛的ですね。」
「ずーっと考えてるからね、最近。」
ふっと落ちた小さな笑み。少し疲れているようにも見える。