リナリア
階段の一番上に立つのは拓実。その間に着替え終わった椋花。そしてその椋花に手が届きそうな位置にいるのが知春だった。
「へー椋花、似合ってんじゃん。」
「…それ、どういう意味?」
「そのまんまだけど。」
「あんたねぇ!」
二人のやり取りに、名桜は安堵した。
「名桜。」
「はい。」
「俺と椋花の立ち位置ここでいいの?動きは?」
知春が『椋花』と呼んだ瞬間に、椋花の肩がビクッとしたのがたまたま目に入ってしまった。多分これは、知春が見ていなくてよかったものだろう。
「知春さんが一番手前で、椋花さんの背中に手をあてて、少しその背を押す感じにしたいと思っています。椋花さんはそれに押されて前に進み、王子様のもとに向かうという構成です。」
「わかった。名桜はどこから撮るの?」
「脚立を持ってきていただいたので、丁度知春さんの上半身から上と同じ目線になるようにしようと思っています。」
「あぁ、なるほどね。」
「俺はどうしたらいいー?」
「…手を、差し伸べてもらえますか?」
「こんな感じ?」
「そうです!」
「おいおい、椋花、そんな嫌そうな顔すんなって。」
「してないよ!」
「はいはい、やろうやろう。椋花、背中こっち。」
「うん。」
「あの、小島さんって。」
「うん?」
「モデル経験がおありって話でしたよね?」
「あー…結構前にね。ちょっとだけだよ。」
「全然素人じゃないですね。撮影しますってなったらスッとスイッチが入る感じがします。ブランクがあるとは思えません。」
「言われてるよーたく。」
「知春ほどじゃねーし。」
「たくは天才肌タイプだよ。俺と違って本能型。」
「そうかもしれません。」
名桜は二人のやり取りに微笑んだ。二人に負けてはいられない。名桜も自分のやるべきことをしなくてはと気合が入る。
「椋花さん。」
「な、なに?」
「ここはお二人に任せて、椋花さんはリラックスして立ってください。できれば、王子様に手を伸ばしてもらえるといいかなって思います。」
「…わかったわ。」
この場で一番緊張しているのは椋花だろう。そう思って声を掛けた。
知春の手が椋花に触れる。拓実の手が椋花に向かって伸びる。椋花の手が拓実に向かって伸びていく。名桜の指がシャッターを切った。
「へー椋花、似合ってんじゃん。」
「…それ、どういう意味?」
「そのまんまだけど。」
「あんたねぇ!」
二人のやり取りに、名桜は安堵した。
「名桜。」
「はい。」
「俺と椋花の立ち位置ここでいいの?動きは?」
知春が『椋花』と呼んだ瞬間に、椋花の肩がビクッとしたのがたまたま目に入ってしまった。多分これは、知春が見ていなくてよかったものだろう。
「知春さんが一番手前で、椋花さんの背中に手をあてて、少しその背を押す感じにしたいと思っています。椋花さんはそれに押されて前に進み、王子様のもとに向かうという構成です。」
「わかった。名桜はどこから撮るの?」
「脚立を持ってきていただいたので、丁度知春さんの上半身から上と同じ目線になるようにしようと思っています。」
「あぁ、なるほどね。」
「俺はどうしたらいいー?」
「…手を、差し伸べてもらえますか?」
「こんな感じ?」
「そうです!」
「おいおい、椋花、そんな嫌そうな顔すんなって。」
「してないよ!」
「はいはい、やろうやろう。椋花、背中こっち。」
「うん。」
「あの、小島さんって。」
「うん?」
「モデル経験がおありって話でしたよね?」
「あー…結構前にね。ちょっとだけだよ。」
「全然素人じゃないですね。撮影しますってなったらスッとスイッチが入る感じがします。ブランクがあるとは思えません。」
「言われてるよーたく。」
「知春ほどじゃねーし。」
「たくは天才肌タイプだよ。俺と違って本能型。」
「そうかもしれません。」
名桜は二人のやり取りに微笑んだ。二人に負けてはいられない。名桜も自分のやるべきことをしなくてはと気合が入る。
「椋花さん。」
「な、なに?」
「ここはお二人に任せて、椋花さんはリラックスして立ってください。できれば、王子様に手を伸ばしてもらえるといいかなって思います。」
「…わかったわ。」
この場で一番緊張しているのは椋花だろう。そう思って声を掛けた。
知春の手が椋花に触れる。拓実の手が椋花に向かって伸びる。椋花の手が拓実に向かって伸びていく。名桜の指がシャッターを切った。