リナリア
* * *
「あ、学校楽しかった?」
「…その、母親みたいな発言は…ちょっと…。」
「なによ、母親みたいなものでしょ?それで、ちゃんと勉強してきたんでしょうね?」
「はい。」
ポケットに入れていたスマートフォンが震えた。確認すると、名桜からだった。ラインの画面にシンプルに画像が2枚。
『頼まれていた写真と、個人的に気に入った写真です。』
絵文字もスタンプも何もない画面。らしいといえばものすごくらしい。思わず口元が緩む。
「なぁに?嬉しそうな顔しちゃって。」
「いい写真だと思う。」
スマートフォンを渡すと、マネージャーも優しく微笑んだ。
「手だけだけど、いい存在感。」
「主役は花なんだって。」
「リナリアね。」
「そんな名前の花なんだ。名桜が知りたがってた。」
「教えてあげれば?それにしても、2枚目…これもこの前の写真に近いわね。」
「うん。俺もそう思った。」
「どうやらバンバン仕事が入ってるみたいよ、名桜ちゃん。」
「一応それとなくは言っておいたけど。それで、何か話があったんじゃないの?」
呼び出されたのは、学校の話を聞くためじゃないはずだ。
「あ、そうなの。映画のオーディション、どうかなっていうね。」
「映画?」
「少女漫画原作のヒーロー役。ある意味主役よ。」
「…それって両想いになる系だよね?」
「当然でしょ、少女漫画なんだから。」
「大丈夫かな…それ。当て馬の役とかないの?」
「当て馬なら散々やったでしょ!」
確かに当て馬は何度か演じた。健気にヒロインを想う、報われない役。それが今の人気に火をつけてくれたところもある。演じることはむしろ好きな役柄だった。
「この流れならそろそろヒーローよ、あなたが。」
「…考えてみる、けど。」
そう言って奥のソファに座る。スマートフォンで、調べたいことがあった。知春は『リナリア』と打ち込んだ。
出てきた画像は、確かに今日見たものと同じだった。ふと目に留まった、一つのフレーズ。
『リナリアの花言葉は、この想いに気付いて』
「…ここまで意図してたら怖すぎるけどさ。…偶然にしては…って感じ。」
当て馬の役ならできる。しかし、両想いの役ならできない。その理由は、想いに気付いてもらうことができないから、だ。
「あ、学校楽しかった?」
「…その、母親みたいな発言は…ちょっと…。」
「なによ、母親みたいなものでしょ?それで、ちゃんと勉強してきたんでしょうね?」
「はい。」
ポケットに入れていたスマートフォンが震えた。確認すると、名桜からだった。ラインの画面にシンプルに画像が2枚。
『頼まれていた写真と、個人的に気に入った写真です。』
絵文字もスタンプも何もない画面。らしいといえばものすごくらしい。思わず口元が緩む。
「なぁに?嬉しそうな顔しちゃって。」
「いい写真だと思う。」
スマートフォンを渡すと、マネージャーも優しく微笑んだ。
「手だけだけど、いい存在感。」
「主役は花なんだって。」
「リナリアね。」
「そんな名前の花なんだ。名桜が知りたがってた。」
「教えてあげれば?それにしても、2枚目…これもこの前の写真に近いわね。」
「うん。俺もそう思った。」
「どうやらバンバン仕事が入ってるみたいよ、名桜ちゃん。」
「一応それとなくは言っておいたけど。それで、何か話があったんじゃないの?」
呼び出されたのは、学校の話を聞くためじゃないはずだ。
「あ、そうなの。映画のオーディション、どうかなっていうね。」
「映画?」
「少女漫画原作のヒーロー役。ある意味主役よ。」
「…それって両想いになる系だよね?」
「当然でしょ、少女漫画なんだから。」
「大丈夫かな…それ。当て馬の役とかないの?」
「当て馬なら散々やったでしょ!」
確かに当て馬は何度か演じた。健気にヒロインを想う、報われない役。それが今の人気に火をつけてくれたところもある。演じることはむしろ好きな役柄だった。
「この流れならそろそろヒーローよ、あなたが。」
「…考えてみる、けど。」
そう言って奥のソファに座る。スマートフォンで、調べたいことがあった。知春は『リナリア』と打ち込んだ。
出てきた画像は、確かに今日見たものと同じだった。ふと目に留まった、一つのフレーズ。
『リナリアの花言葉は、この想いに気付いて』
「…ここまで意図してたら怖すぎるけどさ。…偶然にしては…って感じ。」
当て馬の役ならできる。しかし、両想いの役ならできない。その理由は、想いに気付いてもらうことができないから、だ。