リナリア
「麻倉さん、戻りました!」
「おかえり、安田くん。あれ、伊月くんは?」
「今来ますよ、あ、ほら。」
「今日はよろしくお願いします。」
すっと下がった頭が上がった瞬間、名桜はようやく顔と名前がつながった。
「…綺麗な顔。」
「え?」
「名桜!」
「ご、ごめんなさい!」
「名桜ちゃんが大きい声出すの、珍しいね。」
「…すみません。」
何も考えず、本能のままにするりと出てきた言葉だった。目もぱっちりしているし、肌も綺麗だ。それに何より、横顔が綺麗である。そう思ったら口に出ていた。確かに顔が綺麗なんて、男の人に掛ける言葉としてはあまり良いものではなかったかもしれない。名桜は深く頭を下げた。
「すみませんね…うちの娘が。でも、写真の腕はいいです。多分伊月くんと年近いと思うよ。今いくつだっけ?」
「17です。」
「じゃあ名桜の1つ上だね。前半は私が担当します。後半は名桜が。」
知春が名桜に視線を向けた。品定めするようなきつい視線ではなく、本当にただ、観察するような目で名桜を見つめている。
「よろしく、お願いします。」
「こちらこそ。頑張ります。」
「はい。」
瞬時に向けられた笑顔も完璧に綺麗だった。それこそ文句のつけようがないくらいに。
(…でもなぁ、それじゃないなぁ私が撮りたいの。)
今日の仕事は彼が着ている服を綺麗に見せること。それと、彼自身を綺麗に撮ることだ。名桜のやりたいことだけじゃ、仕事にはならない。
「おかえり、安田くん。あれ、伊月くんは?」
「今来ますよ、あ、ほら。」
「今日はよろしくお願いします。」
すっと下がった頭が上がった瞬間、名桜はようやく顔と名前がつながった。
「…綺麗な顔。」
「え?」
「名桜!」
「ご、ごめんなさい!」
「名桜ちゃんが大きい声出すの、珍しいね。」
「…すみません。」
何も考えず、本能のままにするりと出てきた言葉だった。目もぱっちりしているし、肌も綺麗だ。それに何より、横顔が綺麗である。そう思ったら口に出ていた。確かに顔が綺麗なんて、男の人に掛ける言葉としてはあまり良いものではなかったかもしれない。名桜は深く頭を下げた。
「すみませんね…うちの娘が。でも、写真の腕はいいです。多分伊月くんと年近いと思うよ。今いくつだっけ?」
「17です。」
「じゃあ名桜の1つ上だね。前半は私が担当します。後半は名桜が。」
知春が名桜に視線を向けた。品定めするようなきつい視線ではなく、本当にただ、観察するような目で名桜を見つめている。
「よろしく、お願いします。」
「こちらこそ。頑張ります。」
「はい。」
瞬時に向けられた笑顔も完璧に綺麗だった。それこそ文句のつけようがないくらいに。
(…でもなぁ、それじゃないなぁ私が撮りたいの。)
今日の仕事は彼が着ている服を綺麗に見せること。それと、彼自身を綺麗に撮ることだ。名桜のやりたいことだけじゃ、仕事にはならない。