リナリア
* * *

「今日の撮影担当の麻倉です。よろしくお願いします。」
「あー麻倉さん、よろしくお願いします。知春と仲がいいって噂の。」

 猫っ毛の茶髪が揺れた。人懐っこい笑顔がずいっと名桜の目の前に現れる。 

「仲がいいかは…ちょっとわからないですけど。上原さん、知春さんと共演されてますもんね今。」
「割と一緒になること多くて、仲良くしてるんだ、知春とは。だから今日の撮影楽しみだったんだよね。よろしくね。」

(…なんていうか、知春さんとは違って気さくなタイプの人だ…。)

 知春はある意味、仕事の時は一線引いている。ここは仕事の領域で、ここはプライベート、という線がある。しかし、上原は違う。知春同様若手で売れているからこそ名桜でも知っているが、そういう線はあまり感じない。

「えっと、上原さんって年上ですよね…?私今17なんですが。」
「あー3コ上かな。まだ2コだけど、最終的に3コになる感じ。」
「そうなんですね。すみません、いきなり年なんて聞いちゃって。」
「いやいや、俺が馴れ馴れしかったからでしょ?まぁでも、年とか気にしないで。撮影、よろしくね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 今日の撮影はポスターだ。男性用の整髪剤のCM関係の1枚を撮るのが今日の目的である。

「今もう使ってますか?」
「一応?手につけようか?」
「お願いします。いつもスタイリングしてる感じで髪、触ってもらっていいですか?」
「もちろん。」

 手に馴染ませる姿も様になる。さすがに背景がいまいちなのでシャッターは切らないが、上原には自由に動いてもらった方がいい気がする。
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