リナリア
「どんな感じにしようか。かっこいい感じ?慣れてない感じ?」
「かっこいい感じでいきましょう。それのパッケージもかっこいい感じですし。」
「オッケー。」

 すっとスイッチが入るタイプのようだ。突然顔が変わる。髪をかき上げる仕草が文句なしにかっこいい。射貫くような視線にシャッターを切る。片目が隠れていた方が、もう片方の目の魅力が増す。

「あの。」
「なにー?」
「片目隠す感じで動き止めてもらってもいいですか?」
「あ、かき上げながらってこと?」
「はい。」
「目はどっちがいいとかある?」
「ないです。どっちでも、やりやすい方で。」
「はーい。」

 声が明るいし、動きもリラックスしているけれど、カメラの前に立つと一瞬で『作品』になる。ニッと口角が上がった。その瞬間にシャッターを切る。

「あとはどうする?」
「ちなみに可愛い感じだとどうしますか?」
「うーん…一連の流れでやってみる?使い方わかんない、みたいな感じで。動きは止めないけど。」
「やってみてもらっていいですか?」
「うん。」

 初めて使ってみる、ワクワクと緊張。それが表情でわかる。開けてみて匂いを嗅いでみて。つけてみて、鏡を見直してみて。そんな仕草が確かに可愛い。

「どう?撮れた?」
「どっちもいいと思います。あとはどっちを採用するかって感じかと。確認しますか?」
「うん。見せて。」

 パソコンに写真を映す。上原が拡大したのは片目を隠してあった写真だ。

「…へぇ、これすごいね。」
「大きくするとちょっと迫力つきすぎたって感じもしなくはないですが…。」
「でもこれが看板になったり広告になったら結構目を引くよね。」
「それは確かに…。」

 スタイリストやヘアメイクの人も一緒に写真を見る。こっちの方がいいとか様々な意見が飛び交う。OKが出たのでここで撮影は終了だ。
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