リナリア
* * *
「そういうことなら任せて!当日ここに来てくれたら着せちゃうし、なんならメイクだってしてあげちゃう!」
「いやあの…そこまでのレベルの話じゃないんです。」
夏休み3日目。家のスタジオではなく、別のスタジオで撮影だった。今は休憩時間で、仲良くしてもらっているスタイリストの梶に、花火大会に行かねばならなくなったこと、しかも浴衣を着なければならなくなったこと、安く貸し出しと着付けをしてもらえるアテはないかと訊いていたところだった。
「だって知春くんも行くんでしょ?」
「…それが一番心配ですよね。」
「なんなら知春くんの変装もやってあげようか?」
「え?」
「髪変えて、小物で変えちゃえばいいんでしょ。浴衣着せてあげたいところだけど、浴衣着せたら美しさが際立っちゃいそうだからなぁ、知春くんは。」
梶が言わんとしていることは、名桜もなんとなくわかる。知春に浴衣はきっと『似合いすぎてしまう』。
「名桜ちゃんって知春くんと連絡取れる?」
「はい。」
「じゃあ知春くんがくるってなったら教えてね。完璧に別人にして見せるから。」
「…わかりました。」
梶の申し出はありがたい。知春に関しては思う存分やってほしいが、自分に関しては手加減してほしい。
「…浴衣着るってだけで緊張するのに…。メイクまでプロにされたらどうなるの、私…。」
「そういうことなら任せて!当日ここに来てくれたら着せちゃうし、なんならメイクだってしてあげちゃう!」
「いやあの…そこまでのレベルの話じゃないんです。」
夏休み3日目。家のスタジオではなく、別のスタジオで撮影だった。今は休憩時間で、仲良くしてもらっているスタイリストの梶に、花火大会に行かねばならなくなったこと、しかも浴衣を着なければならなくなったこと、安く貸し出しと着付けをしてもらえるアテはないかと訊いていたところだった。
「だって知春くんも行くんでしょ?」
「…それが一番心配ですよね。」
「なんなら知春くんの変装もやってあげようか?」
「え?」
「髪変えて、小物で変えちゃえばいいんでしょ。浴衣着せてあげたいところだけど、浴衣着せたら美しさが際立っちゃいそうだからなぁ、知春くんは。」
梶が言わんとしていることは、名桜もなんとなくわかる。知春に浴衣はきっと『似合いすぎてしまう』。
「名桜ちゃんって知春くんと連絡取れる?」
「はい。」
「じゃあ知春くんがくるってなったら教えてね。完璧に別人にして見せるから。」
「…わかりました。」
梶の申し出はありがたい。知春に関しては思う存分やってほしいが、自分に関しては手加減してほしい。
「…浴衣着るってだけで緊張するのに…。メイクまでプロにされたらどうなるの、私…。」