リナリア
* * *

「梶さんが?」
「…もし知春さんがこれるなら、ですけど。」

 ラインでメッセージを送信したら着信で返ってきた。事のあらましを全て説明し終えて、知春の返答を待つ。

「変装、やってくれるなら頼みたいな。実際どうしようかって思ってたんだよね。」
「…なんで花火大会、行くことにしたんですか?」
「たくにもバレてたから。」
「何がです?」
「…俺が、元気ないって。結構仕事行ってたから、そんなに会話してなかったんだけどね。」
「鋭いんですね。」
「うん。たくは割とね、よく人を見てるタイプ。気晴らしにってことで誘ってくれたんだと思う。だったら無下にできないでしょ。」
「そう…ですね。」
「梶さんには伝えておいて。お願いしますって。」
「わかりました。」
「名桜は浴衣着付けてもらうんでしょ?」
「七海のせいで着ることになったので…。」
「いいじゃん。花火大会に浴衣。」
「知春さんは浴衣着ちゃだめですよ。」
「そうなの?」

 とぼけた声が返ってくる。テレビでは決して聞けない声だ。

「梶さんとの話し合いで決まりました。知春さんは浴衣、だめです。」
「そっか、残念。名桜が着るなら俺も着たかったな。」
「知春さんの場合、目立ちますからね、絶対。」
「そうかなぁ。案外ばれないと思うんだけど。」
「甘いです。ばれます。」
「はは。厳しいなぁ。」
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