リナリア
* * *

(…どうしてこう、他人の恋愛事情ばかりわかっちゃうかなぁ…。)

 知春にも、一緒に来た友達にすら目もくれず、照れながらも真っ直ぐに向けられた視線の先にいたのは名桜で。触れる手が優しいのも、目が優しいのも、その理由を一瞬でわかってしまうくらいには鈍くない。

「おーうまく化けてんじゃん。」
「…一瞬、ちょっとわかんないね、知春。」
「やっと来たし。」

 これでようやく全員が揃う。

「…化けてるって言い方、何とかならない?」
「事実じゃん。なにこれ、ワックス?」
「プロの手によるものだからね。」
「ずる!あー名桜ちゃん、めちゃくちゃ可愛いじゃん。」
「…私もプロの手によるものなので…。」
「え、まじで?」
「あの子と一緒に来たの?」
「うん。ちょっと共通で知り合いのスタイリストがいて、お願いしてもらったんだよね。」
「ふぅん。」
「…なんか、機嫌悪い?」
「別に?」

 こういう時の椋花は割とずっと知っている。拗ねたらなかなか機嫌がなおらないからこそ、ここで早めに処置したい。

「浴衣、着たの見るのって中学以来かな?」
「うん。知春は着なかったの?」
「…厳密に言うと着たには着たけど、それで行っちゃだめってストップかかった感じ。」
「まぁ…それは仕方ないかもね。」
「似合ってるよ。俺も紺色着てたんだ。お揃いだったね。」
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