リナリア
* * *
『ファインダー越しになら、真っ直ぐに見つめられる』
(きっとその言葉に嘘はなくて、その真っ直ぐさを知春もきっとわかっていたんだろうな。)
名桜の下がってしまった視線を見つめて申し訳なくなりながら、拓実は小さく心の中で呟いた。この2人はある意味、似た者同士なのかもしれない。
「俺も一回、名桜ちゃんに撮ってもらえたらよかったかなぁ。」
「いつでも撮りますよ?どういうコンセプトで撮りますか?部活のPRポスターでも、文化祭用の広告でもなんでも。」
「あ、元気になった。本当に写真、好きなんだね。」
「…す、すみません。気を遣わせちゃったみたいで…。」
「いや、こっちこそ変に勘ぐってごめんね。余計なお世話だってわかってるけど、知春も恋愛したらいいのにって思う気持ちもまーあってさ。」
(知春に彼女ができれば、椋花だって知春を諦められる)
そんな黒い感情が自分にあることは、誰にも言えない。それにもし、知春が椋花に振り向いたら、それこそ自分が今度は諦める番になる、というのに。
(ねぇ、椋花。君は気付いてる?)
知春のいない席を見つめて、ため息をついていること。
知春のいない時間のノートを、いつもより丁寧にとっていること。
知春が芸能人になる前からちゃんと好きだったこと。
切そうな横顔を何度も見てきた。そのたびに、『今いてほしいのは自分じゃない』と、呪いの言葉を唱えて、ぐっと我慢していた。
(そんな俺に、君は気付いてる?)
『ファインダー越しになら、真っ直ぐに見つめられる』
(きっとその言葉に嘘はなくて、その真っ直ぐさを知春もきっとわかっていたんだろうな。)
名桜の下がってしまった視線を見つめて申し訳なくなりながら、拓実は小さく心の中で呟いた。この2人はある意味、似た者同士なのかもしれない。
「俺も一回、名桜ちゃんに撮ってもらえたらよかったかなぁ。」
「いつでも撮りますよ?どういうコンセプトで撮りますか?部活のPRポスターでも、文化祭用の広告でもなんでも。」
「あ、元気になった。本当に写真、好きなんだね。」
「…す、すみません。気を遣わせちゃったみたいで…。」
「いや、こっちこそ変に勘ぐってごめんね。余計なお世話だってわかってるけど、知春も恋愛したらいいのにって思う気持ちもまーあってさ。」
(知春に彼女ができれば、椋花だって知春を諦められる)
そんな黒い感情が自分にあることは、誰にも言えない。それにもし、知春が椋花に振り向いたら、それこそ自分が今度は諦める番になる、というのに。
(ねぇ、椋花。君は気付いてる?)
知春のいない席を見つめて、ため息をついていること。
知春のいない時間のノートを、いつもより丁寧にとっていること。
知春が芸能人になる前からちゃんと好きだったこと。
切そうな横顔を何度も見てきた。そのたびに、『今いてほしいのは自分じゃない』と、呪いの言葉を唱えて、ぐっと我慢していた。
(そんな俺に、君は気付いてる?)