空に願いを…
インターホンを鳴らす
以前は鳴らせなかった
はい、と出てきたのは
白髪交じりの年配の男性
『こんにちは』
そういうと、中へどうぞと言ってくれた
名前も名乗っていないのに
大丈夫かな?と思ったが
だれ?と奥から出てきたのは年配の女性
私の顔を見るなり
「いらっしゃい、桜ちゃん」
一度も空の両親に会ったことはない
なぜ私の事を知っているのか
それはすぐにわかった
「ごめんなさいね……写真」
空のお母さんが申し訳なさそうに言う
お母さんが言う写真とは
仏壇の前に飾られている写真のことだ
写真立てに入って飾られている写真は
空と同棲してすぐの写真
空の誕生日をお祝いした時に
ケーキを挟んで二人で撮った写真
空も、私も笑顔の写真だ