アシスタント!!
それは違う
｢ここ、間違うてるやないですか｣


漫画家の、那住啓(ﾅｽﾞﾐ ﾋﾗｸ)に冷たく睨まれ、アシスタントの苗木直見(ﾅｴｷﾞ ﾅｵﾐ)は、


｢私はこっちの方がいいと思いますけど｣


｢いいから、言われた通りにやってください｣


｢はい、わかりました～｣


直見は今年４０になる。バツイチで、息子が１人いた。


首都圏の外れで、実家が自営業のわりに人見知りで、


絵を描くことが好きで、友達も作らず、１人でいるのが３度のご飯より楽しかった。


学校が終わると真っ直ぐ帰宅し夕方のアニメに浸り、声優の声に酔いしれた。


もちろん小遣いの許す限り、アニメ雑誌を買い、


当時クリアファイルを下敷きにするのが流行ったが、

クラスメイトがアイドルの切りぬきやシールを文房具に貼るところ、

キャラクターの切りぬきを挟み、眺めてにやにやしていた。


ビデオデッキもあまり普及していなく、ビデオでしかない、見たいアニメ作品は、


夏休みなどに放映されるものを、かじりついて見た。


そんな生活が高校を卒業するまで続いた。


集団行動を余儀なくされた修学旅行も、ひとりアニメショップに行き、結果呼び出され注意された。

そういう意味では問題児だったが、そんなことで懲りる性格ではなかった。


門限どころか、引きこもりに近かったが、その意味で両親を不安にさせた。
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