アシスタント!!
携帯の電源を切り、


頭を冷やそうと、久しぶりに町に出てみた直見。


木下辺りから呼び出しが来るかもしれない。


改めて外の空気に触れることもなく今日まで来た。


家と仕事場の往復とはいえ、それすらも、自転車で走り抜ける程度で、


秋の空気、香りを、気に留めたこもない。そんな風情を感じたい人間でもない。


女性としては、仕事場に季節の花のひとつも生ける方がいいのだろうが。


花屋の前を通ると、花の香りがした。何の花なのかもわからない。

昔の少女漫画なら、キャラクターのイメージで、背景に描き混んだりする演出もよくあった。


ふと、五感を研ぎ澄ますと、いろんな音、声、匂いが、すべて感じられた。


「もう秋か…」


銀杏並木の間に、大きめの本屋が見えた。


職業病だなと思いながら、入ってみる。


あちこちに新刊のハードカバーや、話題の本が、山積みになっていた。


コミックのコーナーには、那住の本も平積みにされていた。


『最新刊、近日発売!乞うご期待!!』


POPやポスターが、宣伝してくれている。


那住の漫画が載った雑誌を立ち読みする大人たち。


無意識に、開かれた那住のページが目に入る。


「何してるんだろう、私…」


これではリサーチにわざわざ出てきたようなものだ。


と、


グラビアの写真が目に入る。


「この子…」


「直見さん?」

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