アシスタント!!
「巧くん」


「どうしたんですか?珍しいですね。お仕事は、お休みですか?」


「あ、いや、うん…」


喧嘩して飛び出したなどとは言えない。


「リサーチに来てみたんです。うちの本の」


巧の場合はあからさまに原稿引き取りまでの時間潰しだ。


「時間あるなら、お茶でもしませんか?」


「巧くんこそ、仕事中でしょう」


「少しくらいなら、大丈夫ですよ」


巧基準はいい加減だ。新人の癖に、と呆れる直見。


「缶コーヒーくらいなら」


昔馴染みだからといって、よく知らない人間と喫茶店に入るのも気が引けた。


外の駐車場付近で、コーヒーを飲んでいると、救急車が走り過ぎた。


「この辺は、賑やかだね。仕事場からそんなに離れてないのに。

久し振りよ。こんなにゆっくりしたの」


「あんまり頑張りすぎると、体に毒ですよ?」


「オバサンだしね」


「直見さんは若いですよ!あの、僕でよかったら」


直見に向いたとき、さっきの救急車が帰ってきて掻き消した。


「じゃあ、帰るわ。頑張ってね」
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