アシスタント!!
「お疲れさまです」


恐る恐る、巧が部屋を訪れたのはひと月後のことだった。


「お加減は、いかがですか?」


「もう、大丈夫ですよ」


とりあえずのところはね、とみんな思った。


あとはあなたの言動次第、と。


誤解は溶けないままなので、やはり巧の声だけで、イラッとはするようだ。


「そうそう!今そこですごい方と一緒になりまして!ご案内しました!」


「お邪魔しま~す」


甘ったれた声で、里花が現れた。


「お、奥さん…」


木下は知っていたようだ。


「えっ?奥さん??」


巧が驚き、顔がほころぶ。これはいよいよチャンスだと。


「…何しに来たとですか」


背中を向けたまま、那住が冷たく呟く。


「ひどいわね!今日原稿上がるんでしょう?これ、さ・し・い・れ!皆さんで召し上がって!」


並ばないと買えない、雑誌やテレビで話題のスイーツ店の箱だ。


本人が並ぶはずもない。


そして那住が一番嫌いなものだ。

「あっ、あとでサイン頂いていいですか?」


直見がため息をつくと、


「ちょっと、いい?」


強引に巧を促し外に出る。その辺でできる話でもなく、やむなく近所の喫茶店に入る。



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