失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。



久しぶり……。
ここからの眺めも、なんだか懐かしいと思ってしまう。

たった、数週間なのに、もうこの場所が恋しいなんて…。


「おまたせ、カフェラテだ」

「あ、はい……」


何も言ってないけど、いつも頼むブレンドコーヒーが出てきた。それを手にとって、あたしは目を見開く。


「これ……誰が作ったんです?」


林檎のラテアート、こんなの描く人、1人しか思い浮かばない。それを見ただけで、泣きそうになる。


「あ、あぁ…見よう見まねで、お、俺が…」

「そう…だったんですか…」


なんだ、鈴木さんも、ラテアート出来るのね。
でも、本当にそっくり…。


一口、飲んでみようとカップに口をつける。


「!!」


深い苦味……。
さして、ミルクがとても甘い。


「味も……翔のと同じ」


「え!?」


あたしの呟きに、鈴木さんは驚いたような声をあげる。


「あぁ、ごめんなさい。あまりにも…その、似ていたので」

「いや……そうか、林檎さんはまだ…」


意味深にあたしを見つめる鈴木さんに、あたしは首を傾げた。すると、鈴木さんは立ったままあたしの肩に手を置いた。
























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