失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。


「……幸せ…に決まってます」


だって、元カレと寄りを戻すって話になってるんだから。
でも、幸せなんかじゃない。


「そうか…ありがとう、答えてくれて」


その答えに、何故か満足したように頷く鈴木さんに首をかしげながら、あたしはコーヒーを一気のみする。


「ごちそうさまでした、お会計を」


あたしは、せっせと立ち上がり鞄をもつ。


「それは、もらえないんだ」

「え…もらえないってどういう事です?」


言葉の意味がわからない。
あたしが首を傾げていると、鈴木さんは笑った。


「また、来てくれよ!林檎さんなら大歓迎だ」

「また……なんて……」


またなんて、もうきっと無いわ。
本当に、ここで過ごした日々は楽しかった。


あたしは、まともに鈴木さんを見れず、カフェを出た。そして、人混みの中をボーッと歩く。


そういえば、最初は、英太にフラレた所から始まったんだったわ。



『もう、お前には魅力を感じない』


その一言で、あたしは長年連れ添った彼氏と別れた。


それも、他に好きな女までいるとか…あの時のあたし、惨めだった、本当。


「あ……そう、ここだった」


あたしは、無意識に、レインボーブリッジの見える、この東京湾沿いの道に立っていた。













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