失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。
今日こそ結婚しようって言われるんじゃない?
何度も周りの友達から言われたし、あたしもそう期待してる。
だから、疑ってなかった。
今までの関係が、あっけなく終わるなんて……。
「別れてくれ」
「ごめん、もう一度言って」
あたしは、長年連れ添った同い歳の彼氏、矢切 英太(やぎり えいた)に聞き返す。
待ち合わせには15分も遅刻してくるくせに、相変わらず黒髪のオールバックはしっかりセットされてる。
挙げ句の果てに、「別れてくれ」とか言い出して……あたしの耳がおかしいのかと疑った。
「もう、お前には魅力を感じない」
「な…はぁ!?」
こんなに着飾って、普段あまりしないメイクまでした。パサパサな髪もオイルで保湿して、綺麗にまとめて……。
全部、この日の為に頑張ったのに。
「別れて、林檎。もう、俺に気持ちは無いから」
「なんで……」
魅力が無いとか今更じゃん。
そんなの、今まで付き合ってたんだから、承知の上でしょ?
「それじゃあ、さよなら」
「英っ……」
遠ざかる背中に、とっさに手を伸ばす。
だけど、その後にどうやって英太を呼び止めれば良いのか、分からなかった。