失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。


「翔先輩、今日はお休みなのに、どーしてここに?」


げ、嶺ちゃんと翔の鉢合わせ……。
もう、また面倒なタイミングで登場してきて……。


「林檎とデート」

「はい?」


シレッと答える翔に、嶺ちゃんは目を点にした。
それはもう、漫画みたいに。


「ほら、行くぞ林檎」


グイッと手を引かれて、あたしは翔に引きずられる。


「ちょ、ちょっと!」


戸惑いながらも、振り返ると、まだ嶺ちゃんは固まっている。そして……。


「えぇーーーっ!?あの翔先輩がぁ!?」


後ろから、悲鳴に近い叫び声が聞こえた。


「ちょっと、デートって言っちゃって良かったの?」


ただ、出掛けるだけなのに。
デートなんて、翔も本気じゃないに決まってる。


「デートだし」


デートだと言い張る翔に、あたしは首を傾げる。


「あたしには、デートする理由が見当たらないんだけど」

「理由が必要なのかよ」


翔は立ち止まり、あたしを振り返る。
もちろん、手は繋いだまま。


なに……?
だから……なんでそんな、真剣な目で見るのよ。













 









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