失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。


「あたしも、元彼の事は本気で好きだった。結婚だって考えたし、運命で繋がってるって……」


あぁ、駄目だ。
また、泣きそう……。


潤み始める目に、必死に力を入れてこらえる。


「きっと大丈夫、いつか、想いのベクトルが向き合う人が現れるわ」



それは、自分に言い聞かせるような言葉だった。


いつか、あたしが本気で好きになった人に、本気で好きになってもらえるように…。


「林檎だって、辛い思いしてんのに、なんでそんな前向きになれんだよ」


もう恋なんてしないって思ったけど…。

翔を見ていたら、この人の悲しみを何とかしてあげたいと思った。


だからか、不思議とあたしが強く前向きでいなきゃと思うの。


「翔のおかげね、あなたの卑屈な言葉以外の言葉が聞いてみたいのよ」


「はぁ?なんだそれ……」


心底分からないと首を傾げた翔に笑みを向けた。












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