失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。


「え!林檎さん帰っちゃうんですか!」

「うん?」


嶺ちゃんが慌てたように立ち上がったあたしを引き止める。


「翔先輩が悲しみます!」

「そーかしら?あたしには、ただ腹の虫が悪いようにしか見えないわ。少し、ほっといたほうがいいのよ」


カフェに来いって言ったくせに、勝手に離れるとか…翔が悪いのよ。


なんというか、あたしも意固地になってるのは分かってるんだけど…。


「じゃ、じゃあね、嶺ちゃん。鈴木さんにもよろしく言っといてね」


「林檎さぁぁん…」


ちょっぴり情けない声であたしを呼ぶ嶺ちゃんには気づかないふりをして、カフェを出た。



「それでは先生、また明後日の打ち合わせで」

「はい、また…」



あたしは後藤さんと別れて、帰り道でウインドウショッピングをする。


「あ、そういえばここの『7℃』のペアリング、結局プレゼントされる事もなかったな…」


『7℃』はブライダル関係から普段のお洒落まで、アクセサリーや時計を置いているブランド店だ。


高校生の時、英太と紗枝の3人で帰った事があり、チェーン店のガラスウインドウから見えた『7℃』の指輪を見て、「指輪貰うなんて、夢だよね!」なんて話した。










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