失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。
ートントントントンッ
あたしは、まな板の上の玉ねぎを切りながら、後ろで興味深そうに手元をのぞき込む翔を振り返る。
「ねぇ、どうしてあたしが料理作るのよ?」
ご飯食べに行こうって言ったのは翔なのに、お昼時、どこもかしこもお店が混んでいた。
耐えかねた翔の「林檎が作れよ」というわがまま発言から、急きょ、家で料理を作る事になった。
「俺、料理の才能ねーの」
「カフェで働いてるのに?」
「俺、バリスタなの」
シレッと答える翔に、いつものあたしなら怒るけれど、その時は吹き出してしまった。
「ふふっ、翔あなた、本当にブレないわね」
「そ、そうだよ、俺はブレない男なの」
翔はあたしの顔を一瞬驚いたように見つめて、すぐにそっぽを向いた。