失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。


「林檎」


不意に、真剣な顔で名前を呼ばれる。
あたしは、翔を真っ直ぐ見つめ返した。


「もう恋愛なんてしないと思ってたのは、俺も同じだ」


「思ってたって…」


「どんなに認めたくなくたって、惹かれてしょうがねー女が出来た」


あたしを見つめて、まるで愛の告白のような言葉を言う翔に、あたしは目を見開く。


やめてほしい、期待しちゃうじゃない。
翔には、忘れられない人がいるのに…。


「ただの店の常連だと思って声をかけたのがまずかった。他の男に泣かされてる所を見ると、すげームカついて、傍にいないといないで、落ち着かない」


「ねぇ、それって……」


お願い、あたしだって言って。
そうしたら、あたしも…あたしも、あなたたって言うから。


頬に添えられた手に、この手を重ねたい。
あたしと、あなたの想いが、同じベクトルなら。
















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