失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。
ーチュッ
リップ音を鳴らせて、一度触れるだけのキスをした。
「なっ…あなた、いきなり…」
「オイオイ、普通、こーいう時は、目瞑るんじゃねーの?」
真っ赤になって慌てるあたしを可笑しそう見つめる翔の額が、あたしの額にも合わさる。
翔と、すごく近い距離で目が合った。
「もう、俺のモノでいいだろ?」
「モ、モノじゃないけどね!まぁ、許すわ」
あぁ…。
あたし、こういう時に可愛く言えないのよね。
でも、こんなあたしを可愛いって言ったんだもの、責任とってよね、翔。
「ハハッ、林檎といると、飽きねーな」
「あ!やだ、翔!ご飯冷めちゃうじゃない!」
翔から体を離して、あたしは大声を上げる。
せっかく作ったハンバーグもミネストローネも、冷めちゃったらまずいわよ。
「ゴメン、先に林檎が喰いたい」
「は?な、何言ってるのよ、あなた……」
なんという、恥ずかしい発言。
正気?というか、あの不機嫌ぶっきらぼうな翔とは思えない。
「無理、だって今がとりたて、赤くて美味しそうなんだよ」
「っ!!」
翔は、まるであたしを果物の林檎をかじるように頬に歯を立てた。
「翔っ!!」
「あー、旨いわ。じゃあ、おかわりな」
そう言って色んな所を噛んでくる翔に翻弄される。
それが、求められているようですごく嬉しかった。
冷めた料理は後で温めればいい。
今は、翔に触れていたい。
あたしは笑みを浮かべて、翔に抱きつくのだった。