失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。


「ねぇ、翔」

「あぁ?」


だから気になった。
こんなぶっきらぼうだけど優しい人を振った女性の事。


「翔の元カノは、どんな人だったの」

「そんなん、知りたいのか?聞いてて気分悪いだろ?」


怪訝そうに見る翔に、あたしは首を左右に振った。


「聞きたいの、翔が1度は大切にしたいと想った人の事」

「変なやつ……まぁ、いーけどよ」


すると、翔は天井を見つめて、ポツリポツリと話し出す。


「美紀(みき)は、画家だったんだ。俺が通ってた大学の教師で、美術を教えてた」


「へぇ…」


先生と生徒の恋って、本当にあるのね。
なんだか、ロマンチックだわ。


「なんつーか、口数は少なくて、儚いっていうのか…。そんな幻みてーな女だなって思ってた」


儚い……か。
うん、自分で聞いといてなんだけど、あたしとは正反対の人ね。


少し、胸が切ない。



















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