失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。
「でも、自然と落ち着く…そんな所に惹かれてたんだけどな…。まぁ、実際は好きな奴が出来たとか言って、すぐに乗り替えちまうような女だったけど」
「翔………」
あたしは、そっと翔の手を握り、自分の口元に寄せる。
そして、その指に口づけた。
「林檎……?」
「あなたの傍にいる、言っておくけどあたし、すっごく重い女なの。
簡単には離れてなんてあげないから、安心して」
そう言って笑うと、翔は驚いたように目を見開いて、吹き出した。
「勇ましいな、俺の彼女は」
「後悔してる?」
「いいや、全く。それどころか、早くそこに指輪はめてやりてー。そんで、もう誰にも渡らないように予約してさ」
翔はあたしが口づけた薬指を見る。
なんというか、あたしよりも翔の方が重い気がする。
でも、それを苦に思わない時点で、あたしも相当重い女ね。
「モテモテのバリスタ王子も、嫉妬なんてするのね」
「その王子っての、やめろ」
心底げんなりする翔に、あたしは吹き出した。
ずっと、こんな時間が続いてくれたら…そう思いながら。