失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。
「林檎さんって、あの桐谷 林檎さんだったんですね」
「そんな、恥ずかしながら…」
あたし達は木陰のある公園のベンチに腰を下ろして、お互いの事を話しながら、笑い合う。
「何も…聞かないんですね」
mikiさんは、たわいもない話をしていると、不意に真剣な顔をして、あたしにそう言った。
「どうしてですか、気になっているはずなのに…」
「話せたなら、mikiさんはとっくに話してるはずです」
あたしは、mikiさんを真っ直ぐに見つめ返してそう伝えた。
きっと、言えないからあの時も今も、話せなかったんだもの。
ズケズケと聞けるほど、もう若くない。
言葉の裏に隠された想いを考えられる歳になった。
「mikiさんが、話したいって思えた時でいいです」
例え過去を知っても、今のmikiさんがあたしの知っているmikiさんだもの。
「……私は、麻野 美紀(あさの みき)と言います。話した通り、画家をしているんですが、昔は、大学院生で美術を教えていました」
え……?
なんだろう、このデジャヴ。
どこかで聞いた事あるような感覚。