失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。
「ありがとうございます…あの、林檎さん」
美紀さんも立ち上がり、あたしにペコリと頭を下げた。
「本当に、ありがとうございます」
「いいんです、あたしの為でも…ありますから…」
そう、あたしの為でもある。
翔の痛みが、痛いほど分かるから、どうかその傷が癒えて、本当に一緒に居たい人と…生きてほしい。
「え……?」
「いいえ、何も。それじゃあ、明日連絡しますね」
あたしの言葉に不思議そうな顔をした美紀さんに、背中を向けて、あたしはカフェへと向かう。
あぁ、どんな顔して翔に会おう。
きっと、遅いって言われちゃうだろうな……もう、13時を回っているもの。
そしてまた少し歩いて、ようやくカフェへと到着する。
ーカラン、カランッ
「いらっしゃいませ……って、林檎さんじゃないか!」
「ど、どうも……」
カフェに入ると、出迎えてくれたのは、鈴木さんだった。あたしを見て、嬉しそうな顔をする。
「翔のやつ、林檎さんが来ないってソワソワしだしててな、困ってたんだ」
ソワソワ……イライラの間違いで無く!?
はぁ、心が穏やかじゃないな。