失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。
ドキドキ……いや、胃がキリキリしながら、あたしはいつもの窓際の席に案内される。
「注文は、どうする?」
「ええと……コーヒーで。種類は、翔のオススメにします」
あたしは、鈴木さんにコーヒーを頼んで、すぐに窓の外の人並みを眺めた。
どうしよう……なんて、翔に切り出そう。
翔は、あたしを振るだろうから、その事にまた傷つくわ。
翔は、過去に自分がされた事を、あたしにしなければならないから。
でも、それをあたしがやったら……?
今なら、あたしが突き放したとしても、傍には美紀さんがいる。嫌な女なら、きっとすぐに忘れるわ。
あぁ……あたしに出来る?
翔、あたしは……あなたが好きだけど、傷つける言葉を言う事を許して欲しい。
ーコンッ
すると、目の前にカップを置かれる。
見れば、そこには林檎の絵が描かれたカフェラテがあった。
「林檎、顔色悪ぃーぞ、どうした?」
「翔、これラテアート?」
すごい……翔って、手先器用なのね。
これなら、料理だって出来ると思うのに。
「おい、話そら……」
「しかも、林檎の絵ね!すごいわ!」
感動するあたしに、翔はため息をつく。
そして、何も言わずに小さく笑った。
「そんなに喜ぶ事かよ?」
「そんなの……当たり前よ」
だって、翔があたしの為に作ってくれたんだもの。
それに、いつもなら苦くて深いブレンドコーヒーが出てくるはずなのに、今日は違う。