失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。


ドキドキ……いや、胃がキリキリしながら、あたしはいつもの窓際の席に案内される。


「注文は、どうする?」

「ええと……コーヒーで。種類は、翔のオススメにします」


あたしは、鈴木さんにコーヒーを頼んで、すぐに窓の外の人並みを眺めた。


どうしよう……なんて、翔に切り出そう。
翔は、あたしを振るだろうから、その事にまた傷つくわ。


翔は、過去に自分がされた事を、あたしにしなければならないから。


でも、それをあたしがやったら……?


今なら、あたしが突き放したとしても、傍には美紀さんがいる。嫌な女なら、きっとすぐに忘れるわ。



あぁ……あたしに出来る?


翔、あたしは……あなたが好きだけど、傷つける言葉を言う事を許して欲しい。



ーコンッ


すると、目の前にカップを置かれる。
見れば、そこには林檎の絵が描かれたカフェラテがあった。


「林檎、顔色悪ぃーぞ、どうした?」

「翔、これラテアート?」


すごい……翔って、手先器用なのね。
これなら、料理だって出来ると思うのに。


「おい、話そら……」

「しかも、林檎の絵ね!すごいわ!」


感動するあたしに、翔はため息をつく。
そして、何も言わずに小さく笑った。


「そんなに喜ぶ事かよ?」

「そんなの……当たり前よ」


だって、翔があたしの為に作ってくれたんだもの。


それに、いつもなら苦くて深いブレンドコーヒーが出てくるはずなのに、今日は違う。




















































< 96 / 116 >

この作品をシェア

pagetop