失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。
あたしの体調を気遣って、ミルクベースのカフェラテを作ってきてくれたんだ。
何も言わなくても、翔が何を考えているのか、分かるくらいには、近づけたのにな…。
あたしは、切なくて、離れたくなくて、翔をジッと見上げた。
「なぁ、本当にアンタどうし……」
「翔、注文入ったぞー!」
翔を呼ぶ鈴木さんの声。
翔はあたしと店の奥を交互に見て、戸惑っている。
あたしに、気を遣ってくれてる。
今からこるじゃあ、先が思いやられるわね。
「翔、行ってきて」
「でも、林檎……」
「大丈夫、お店閉まるまで、ここで待ってるわ」
そう言って作り笑いを浮かべる。
すると、騙されてくれたのか、翔は少しホッとしたように頷いた。そして、すぐに奥へと戻っていく。
翔の背中を見つめながら、切なくて泣きそうになった。
それを必死に堪える。
今日だけは、翔の彼女でいられる。
だから……あたしも、いつも通りでいよう。
そう自分に言い聞かせていた。