梅に鶯 ~新選組と私に刀~
「沖田さん お薬ですよ」




団子に練りこませたお薬を持って行くと


沖田さんは、御盆の上に


薬と水を用意して、私を待っていた



「僕は、甘味無しで薬を飲むって
言ったでしょ!!
悠真ぁ~ 僕が、お薬飲めたら
ここにいてよ!ね?いいでしょう?」



思えば、新選組に入り

私の話相手をしてくれたのは

沖田さんだけだ



どんなに忙しくても、私を邪魔にせず

いつも、私を気遣ってくれた



襖を閉め、沖田さんの前に座った




私は、臆病者だ



沖田さんの事を信じたら

こんなに優しい人に裏切られることが

怖くて


逃げたいんだ




「沖田さん…私なんかのどこがいいの?」


「なんか…とか、言う弱い悠真も
強く逞しい悠真も
いつも何か考え事しながら
ボーッと掃除してる悠真も
全部、可愛い!!!」



かっ……可愛い!?

目は、大丈夫なのだろうか?



「可愛いと言うのは、八重さんのように」

「男でしょ!山崎君は、可愛くない!」



佐々木さんは、骨抜きなのに…



「変わった好みをお持ちなのですか?」


「…何言ってるの?
悠真は、すっごく可愛い!!
僕、悠真の事、だぁーい好きだよ!!」



子供のように言う沖田さんに笑った


「あははっ ありがとうございます」



近藤さんの為に、私を好きな振りなんて
沖田さんも、大変ね


「よし!僕は、悠真の笑顔を守るため
この薬を飲むからね!!!」


「わかりました
沖田さんが飲めたら…
今回は、帰郷を見送ります」


「わぁ~ 本当ですよ!!
約束ですよ!!うわぁ~嬉しい!!」



こんなに喜ぶなんて……

本当に近藤さんの役に立ちたいのね




だけど、沖田さんは、薬を飲むまでに

かなり時間をかけた


本当に苦手なのね……



「無理せず、こちらをどうぞ」



団子を差し出すと


首を横に振り


薬を手にした


沖田さん…手が震えてる


勢い良く口に粉を入れ


湯呑みを取ろうともがく



「はい!水ですよ!」


苦しそうな沖田さんの背中を擦り

薬を飲み干すのを見届けた



「苦いよぉ……悠真ぁ」



近藤さんの為なのに

なぜか、私の為に頑張ってくれたような


どうして、そう思ったのか



私には、わからなかった










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